「地域の仲間と、地域防災のために活動」
気づきをきっかけに増えた消火器
近藤正喜さんは、2019年から地域防災コーディネーターとして活動を続けています。近藤さんが地域防災に興味を持ったきっかけは、住んでいるマンションで防火管理者に任命されたことでした。
「20年ほど前に受講した防火管理者講習で、国や東京都が大規模災害が起きたときのマニュアルを整備していることを知りました。マンション住民に情報を共有すると、『杉並区の場合はどこに逃げたらいいの?』と聞かれ、『どこだろう…』と、自分が住む地域の防災についてまったく知識がないことに気がつきました。
マンション住民同士では防災対策を話し合うようになりましたが、地域とのつながりがない課題が長年ありました」
その後、近藤さんは偶然すぎなみ地域大学の『地域防災コーディネーター養成講座』の募集を見つけ、「これだ!」と受講を決めました。
「講座の中で、地域防災を考えるには、地域を歩いてみることが重要だと教わりました。実際に地域防災コーディネーター連絡会(以下DCN)のメンバーと一緒に歩いてみると、ある地域の街頭消火器が、杉並区内の他の地域と比べて少ないことに気づき、防災課に伝え、消火器が増設されました。
DCNの活動を通して地域の課題がひとつ解決でき、地域の方とのつながりもできた出来事でした」
地域大学で深まった地域とのつながり
近藤さんが活動するDCNには、現在約80名が所属しています。DCNの活動内容は、主に地域における防災知識の普及啓発や、防災上の課題解決です。
「たとえば私が住む地域では、大規模火災のときに逃げる広域避難場所に、明大和泉校舎一帯が指定されています。DCNで地元の町会にも声掛けをし、一緒に現地視察をすると、指定されている一帯には私有地やお寺が多いことがわかりました。
大規模地震が起きれば墓石は崩れ、寺の屋根瓦も落ちる可能性があります。避難場所に指定はされているものの、必ずしも安全な場所ではなさそうだとわかりました。このような地域の課題に気づき、地域の特性に沿った課題解決を、地域の方と共に行うことがDCNの役割です」
地域防災コーディネーターとして活動する以前、近藤さんは地域との接点がほとんどありませんでした。すぎなみ地域大学の受講をきっかけに、地域の仲間と知り合い、活動を始めたことで、地域のつながりが深まった実感があるそうです。
「自分が学ぶことで新たな気づきを得て、人の輪が広がり、それが地域のためにもなっているというのは、本当にすごいことです。杉並区は、他の自治体と比べても、学びの機会が充実していると感じます。ぜひ気軽に講座を受けてみてください。地域を知り、地域の仲間と出会うことは、自分を豊かにする良い経験にもなっています」
「被災地支援にも活躍したオートバイ」
大規模震災発生時に、オートバイで被災者に物資を届けた経験があるという近藤さん。こうした支援に関わった経験も、防災について深く考えるきっかけになっています。