「自分の好きな方法で社会に触れていると世界が広がります」
役に立てるなら、やってみよう
杉並区には、自分一人で移動が難しい方が利用できる、車両を使った移動サービスがあります。車椅子でそのまま乗れる福祉車両や自家用車などで、利用者を病院などの目的地へ送迎する「福祉車両運転協力員(以下、運転協力員)」です。木野田眞理子さんは、2005年からその一員として活動を続けています。
「子どもが中学校に上がって時間に余裕ができたころ、最初に始めたボランティアが老人ホームでの紙芝居と歌でした。そこで知り合った仲間から声をかけられ、運転協力員の活動を知りました。責任の大きい活動なので、誘われたときは悩みました」
しかしよく考え、チャレンジすることに決めたそうです。
「私自身の通院経験から、障がいを持つ人や、遠方から通院する人の移動の苦労は知っていました。幸い車の運転には慣れていましたので、とにかく『自分が役に立てるなら、やってみよう』という思いでした」
その後、「すぎなみ地域大学」で「福祉車両運転協力員講座」を修了。運転協力員としての活動を始めました。
「基本的に仕事、趣味、家の用事は優先し、空いた時間に行える活動です。私の場合、多いときには週6日活動することもあります。始めたときは、大きな緊張感があり、汗が止まらないほどでした。だんだんと、活動中は冷静に対処して、後で悩もうと心がけるようになりました」
ときにはトラブルに見舞われることもありますが、安全に運転を続けるために「平常心を保とう」と思うことが大切だといいます。
「どんなに準備をしても、道に迷ったり、時間に遅れたりすることはあります。大変なことはありますが、やりがいばかりだったので続けてこられました。移動手段に困っている利用者の方が、『ありがとう』『またお願いします』と言って何度も利用してくれることは、本当にうれしい。この活動を始めてよかったです」
自分のアンテナを広げる
結婚後は仕事を持たず、専業主婦をしていました。
「子育てをしていると、いろいろと悩みを持つこともあります。そんなとき自分の好きな方法で社会に触れていると、世界が広がります。社会に関わっている、人の役に立っているという気持ちが、心の安定にもつながっていると感じます」
まさにライフワークとも言える地域活動に出会った木野田さん。自分に合った活動を見つけるためのポイントを聞いてみました。
「自分の好きなこと、できることにアンテナを張ることだと思います。できることや、特技を活かした活動がきっとあるはずです。若い人でも、高齢の人でも、年齢は関係ありません。自分のアンテナを広げてみれば、いろいろな情報が入ってきます。そして興味を持ったことに、まずは一歩踏み出してみることで、その先の世界が広がると思います」
木野田さんの「わたしのこだわり」
「約束の時間の10分前には到着するようにしています」と言う木野田さん。欠かせない道具の一つが腕時計です。腕の内側にするのが木野田さん流。活動しながらでも、さりげなく時間を確認することができます。