「杉並に住みながら、東京の森を守る」
講座から生まれた青梅との縁
すぎなみ地域大学の中で唯一、すべての活動を区外で行う講座があります。それが『森林ボランティア』です。羽角伸一さんは2021年に『森林ボランティア講座』を修了しました。「もともと登山が趣味で、森には興味がありました。会社を定年退職した後、広報すぎなみで『すぎなみ地域大学』の講座を知り、興味を持ちました。
講座は全10回。月に1度、青梅市の保有する『青梅の森』で実施されます。実践的な内容で、間伐や植林について実際に体を動かしながら学びます。知識が深まったほか、活動のイメージもついたので、その後も自然に活動に入ることができました」
講座修了後、羽角さんは森守会という団体に入り、引き続き青梅市で活動しています。団体のメンバーは40人程度で、そのうち半分は杉並区民だそうです。
「青梅市の土地の7割は森林です。その中でも『青梅の森』と呼ばれる場所は、古くから里山として地元の人に育てられてきました。江戸時代からたくさんの木が植えられてきましたが、育ちすぎた木の間伐をしないと、地面が露出し、土砂崩れも起きやすくなります。
『青梅の森』には多くのハイカーも訪れます。市民の安全を確保し、森林を長く存続させるために、木々の手入れを行うのが私たち森林ボランティアの役割です。自分のように、山歩きが趣味の人が中心となって活動しています」
長野の八ヶ岳など、もともと他県での山歩きを楽しんでいた羽角さん。より身近な東京の森に縁ができたことをうれしく感じているといいます。
自分の興味を生かせる場が必ずある
活動は月に2回。土曜日の朝9時前から15時ごろまでで、17時には杉並に戻ります。大変だと感じることもあるそうですが、羽角さんは森での活動にそれを上回る魅力を感じています。
「昨年冬、入会して初めての活動で、森の中に道を作りました。間伐した木を運び出すための作業道です。山の斜面を切り開き、間伐材を利用して道や階段などを設置しました。その結果、たった半日で100メートルの作業道が完成しました。
これにはびっくりしました。人の力でここまでできるんだという感動がありました。また森の活動を通して、林業の課題や、環境破壊からの森林保護など、さまざまな社会問題が見えてきたとも感じます。自分の活動を糸口に、見える世界が広がりました」
地域活動には、自分の興味の追求が第一だと羽角さんは話します。
「自分の興味にフォーカスしていくと、同じことに興味を持つ人とのつながりが生まれます。まずは自分の興味を見つめ直したうえで、講座やイベントなどに積極的に参加し、興味を深める機会を作るのがおすすめです。『自分の興味を生かせる場は必ずある』と信じることが、自分に合った活動につながっていくと思います」
「森林整備の道具」
森に入る服のほか、ヘルメット、のこぎり、鎌、鉈(なた)等は自分で購入します。羽角さんはチェーンソーを使うため、それに関連する道具も準備するそうです。